大白法 平成26年12月1日刊(第898号)より転載



 法華経についてM
 

(ほっ)()(ほん)第十』

 初 め に
 先の『(ほう)便(べん)(ぽん)』より『(にん)()(ほん)』に至る(しゃく)(もん)(しょう)(しゅう)(ぶん)において、(じょう)(ちゅう)()(こん)(しょう)(もん)等のすべての弟子が、(さん)(しゅう)の説法によって成仏の()(べつ)(さず)けられました。続く『(ほっ)()(ほん)』より五品は、()()(きょう)迹門における()(つう)(ぶん)であり、(ざい)()並びに(めつ)()の衆生をも()(やく)する説法がなされ、法華経()(づう)()(どく)(じん)(じゅう)であることが説かれます。
 特に当品では、法華経を(じゅ)()(どく)(じゅ)()(せつ)(しょ)(しゃ)するという「()(しゅ)(ほっ)()」の功徳と、法華経が諸経の中で(さい)(だい)(いち)の教えであることを明かされ、(しゃく)(そん)滅後における法華経弘通を(すす)められます。さらに()(きょう)の心構えとして「()()(しつ)(さん)()」が説かれています。
 『法師品』の法師とは、五種の(みょう)(ぎょう)とも言い、法華経を、受持・読・誦・解説・書写の五種の行をもって自ら行じ、()を導くことを言います。
 
 『(ほっ)()(ほん)』の内容
 (もん)(ぽう)(ずい)()()(どく)
 釈尊は、(やく)(おう)()(さつ)をはじめとする八万人の菩薩たちに告げられました。
「薬王よ、今この座には、実に多くの様々な人間や(しょう)(るい)(ざい)()(しゅっ)()の修行者などがいる。彼らが、仏前で法華経の(いち)()(いっ)()でも聞き、わずかでも有り難いという喜びの心を起こしたならば、そのすべての人に未来成仏の保証を授けよう。また、仏の(にゅう)(めつ)した後も、法華経の一偈一句を聞いて、少しでも喜びの心を生ずるならば、私はその人たちに記別を授けよう」
と法華経を(ちょう)(もん)(ずい)()する者は必ず未来世において仏になることを説かれました。
 
 ()(しゅ)(みょう)(ぎょう)
 続いて釈尊は、
「法華経の一偈一句でも受け(たも)ち・読み・(あん)(じゅ)(そら)んじて読むこと)し、(かい)(せつ)し・書写し、仏を敬うように、この経に対して種々の()(もつ)()(よう)するならば、その人は(すで)に過去世で何十億もの仏を供養し、仏のみもとで(だい)(がん)を成就していたが、人々を(あわ)れんで、自ら願ってこの世界に人間として生まれてきたのである。この人は未来世に必ず成仏するであろう」
と、受持・読・誦・解説・書写の五種の妙行を行じる法師は必ず成仏できることを確約されました。
 
 (にょ)(らい)の使い
 また釈尊は、
「五種法師の人は、自ら(しょう)(じょう)(ごう)()(ほう)()てて、願って悪世に生まれて、広くこの経を演説するのである」
と説かれ、
「私が入滅した後に、この経の一偈一句を、たった一人のためにも説く者は、(にょ)(らい)使(つか)いである。如来から(つか)わされ、如来の()()いを()す者と知るべきである。まして、大衆の中で、広くこの経を説く者については言うまでもない。もし悪人があって、仏前で仏を(そし)り、(ののし)ったとしても、その罪はなお軽い。それよりも、法華経を読誦する在家・出家の者を毀るほうが、(はる)かに罪が重いのだ」
と、この法華経を受持信行し、一偈一句でもこの法華経を(ひろ)めていく人は、まさに如来の使いであるということを述べられました。
 
 (さん)(せつ)(ちょう)()()()(きょう)
「私が説く(きょう)(でん)は、無量千万億という多数にものぼり、(すで)に説き、現在も説き、また未来にも説くであろう。そして、それらの中で、この法華経こそが最も信じ難く理解し難い勝れた御経である。それは、この経は、仏たちの秘密の教えである。この教えは、容易に理解できないため、仏のいる現在においても、なお(うら)(ねた)む者が多い。ましてや仏の入滅した後にこの経を弘めるならば、なおさらのことである。したがって、薬王よ、仏の入滅の後に、法華経を読誦し、書写して供養する者がいたならば、如来は、その人を如来の衣で(おお)い、如来の手で頭を()でるであろう」
と説かれ、(すで)≠ノ説かれた()(ぜん)(ぎょう)(いま)$烽ゥれた()(りょう)()(きょう)(まさ)≠ノこれから説くところの()(はん)(ぎょう)等の一切諸経に対し、この法華経が最も(なん)(しん)(なん)()の法であり、真実の教えであると示されるのです。
 この教えは、容易に理解できないため、釈尊在世においてすら世間の人々の(おん)(しつ)はたいへんなものであり、ましてや滅後(まっ)(ぽう)において、この真実の妙法を説くことがいかに困難であるかを説かれます。
 
 ()()(しつ)(さん)()(弘経の心構え)
 また、もし人々が、如来の入滅後の時代に、法華経を説き弘めようとするならば、次の心構えが必要であることを次のように説かれました。
「如来の(しつ)に入り、如来の(ころも)を着て、如来の()(すわ)って、如来と同じ気持ちになって説くことである。如来の座とは一切の人を()(へだ)てなく(いつく)しむ()()の心であり、如来の衣とは(にゅう)()(にん)(たい)(づよ)い心、また如来の座とはあらゆる目先の物事に(しゅう)(じゃく)しない心である」
 さらに釈尊は、重ねて()(じゅ)をもって説かれました。その中には、次のようにあります。
「私の入滅後、どのような者でもあれ、この経を説くならば、あるいは悪人が出てきて、その人の悪口を言い、(ののし)り、刀や(つえ)をもって打ちかかるであろう。しかし、法華経の仏を()(ねん)して、()(しの)ぶべきである。そうすれば、どのような(はく)(がい)を受けたとしても、私が(じん)(づう)(りき)によって、出家や在家の男女を遣わし、その法華経の行者を供養し、守護するであろう」
と、法華経を説く人のために「(へん)()の人(出家や在家の男女)」を多く遣わして、説法の聴聞衆にさせると共に、様々な難が起ころうとも説法者を守護し、さらに説法者が経典の御文を忘れたならば、その時は仏が説いて内容を通じるようにしてやろうと説かれました。
 ()(ほっ)()(にち)(にょ)(しょう)(にん)(げい)()は、平成二十二年六月度の広布唱題会の(みぎり)に、
「妙法蓮華経の一偈一句を説く者、すなわち末法において(しゃく)(ぶく)を行ずる者は、(そう)(ぞく)男女を問わず、等しく『如来の使(つかい)』であり、『如来の(しょ)(けん)』として『如来の()』を行じている人々であります。つまり、妙法(こう)()に身を()くし、折伏を行じている人は、すべて『如来の使』なのであります。
 今、宗門は(中略)僧俗一致して(こう)(せん)()()への道を力強く進んでおります。こうしたなかで、我ら本宗の僧俗は、一人ひとりが『如来の使』としての自覚と(ほこ)りを持って、(ゆう)(やく)、折伏に(はげ)むことが今、最も(かん)(よう)であろうと思います」(大白法 七九一号)
()()(なん)されています。
 妙法広布に身を尽くす私たち本宗僧俗は、()(せん)(じょう)()(ろう)(にゃく)(なん)(にょ)の差別なく、すべて「如来の使い」であるとの自覚と誇りを持って、どのような困難があっても、必ず仏様の守護があることを信じて、最後の最後まで(あきら)めず(けん)(めい)の折伏に励み、妙法の大功徳の実証を示してまいりましょう。

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