前回は、寺(じ)院(いん)参(さん)詣(けい)・講(こう)中(ちゅう)活(かつ)動(どう)による育成の大切さを学び、その中で信心・行体の錬(れん)磨(ま)のための教(きょう)学(がく)研(けん)鑚(さん)について触(ふ)れました。

　教学研鑚とは、日(にち)蓮(れん)大(だい)聖(しょう)人(にん)の正しい教法を学ぶことをいいます。

　日蓮大聖人は『諸(しょ)法(ほう)実(じっ)相(そう)抄(しょう)』に、

「行学の二道をはげみ候べし。行学た(絶)へなば仏法はあるべからず」（御(ご)書(しょ)　六六八�n）

と、修行の実(じっ)践(せん)と共に教学の大事を御(ご)教(きょう)示(じ)されています。また、御(ご)法(ほっ)主(す)日(にち)如(にょ)上(しょう)人(にん)猊(げい)下(か)は、平成十八年一月一日に発せられた訓(くん)諭(ゆ)において。

「されば宗内僧(そう)俗(ぞく)一同和(わ)衷(ちゅう)協力をもって只管(ひたすら)に一天四海本(ほん)因(にん)妙(みょう)広(こう)宣(せん)流(る)布(ふ)達成の願(がん)業(ごう)を目指し以(もっ)て教学の振(しん)興(こう)と布(ふ)教(きょう)に徹(てっ)し正法の興(こう)隆(りゅう)に邁(まい)進(しん)することが肝要であります」（大白法　六八五号）

と御(ご)指(し)南(なん)あそばされています。

　広宣流布に向かう自(じ)行(ぎょう)化(け)他(た)の信行において教学を疎(おろそ)かにすることがあってはなりません。信行学を旨(むね)とし興(こう)学(がく)・布教を根本理念とすることこそ、日蓮正宗の信(しん)仰(こう)と言えるでしょう。

　

　御(ご)書(しょ)拝(はい)読(どく)の心得

　大聖人の教法は、「御書」を根本としてその多くを学ぶことができます。

　御書とは、大聖人が書き顕(あら)わされた教義書や、弟子・信徒方に宛(あ)てたお手紙などのことで、大石寺版(ばん)の『平成新(しん)編(ぺん)日蓮大聖人御書』には、五百篇(へん)に及(およ)ぶ御書が収録されています。

　創価学会をはじめ他の日蓮宗系教団でも「御書根本」ということを主張する場合があります。しかし、第二祖(そ)日(にっ)興(こう)上人が『日興遺(ゆい)誡(かい)置(おき)文(もん)』に、

『当門流に於(おい)ては御抄を心(しん)肝(かん)に染め極(ごく)理(り)を師(し)伝(でん)して若(も)し間(いとま)有らば台(たい)家(け)を聞くべき事」（御書　一八八四�n）

と御教示されるように、大聖人より仏法の極理を師伝された日興上人以来、血(けち)脈(みゃく)付(ふ)法(ほう)の御法主上人の御指南に随(したが)って御書を拝(はい)することが肝要です。

　御書に示される御指南は末法の御(ご)本(ほん)仏(ぶつ)の御金言ですから、一文一句なりともゆるがせにしてよい部分はありません。他宗のごとき我見をもって拝しても御(ご)聖(しょう)意(い)を理解することはでき得ず、「御書根本」と言ったところで全く実義が伴(ともな)っていないのです。

　したがって、教学研鑚の柱となる御書の拝読に当たっては、師(し)弟(てい)の筋目を正すことが大切です。御法主上人猊下から直接御指南を戴(いただ)く機会は限られていますから、御(ご)報(ほう)恩(おん)御(お)講(こう)や勉強会の折には必ず所属寺院に参詣し、指導教師のもと血脈相伝に基づいて純(じゅん)粋(すい)に教学を学んでいきましょう。

　一般的に書(しょ)籍(せき)は大切に扱(あつか)っていると思いますが、御書は特に気をつけ、無造作に床に置くなど粗(そ)雑(ざつ)な扱いがあってはなりません。

　また拝読に当たっては、総本山における法要や御講義の折に御書を拝する御法主上人猊下の所作振(ふ)る舞(ま)い、所属寺院における御報恩御講や勉強会での指導教師の所作を手本としましょう。姿勢を正し、御題目を唱え、押し戴いてから拝読するのが基本となります。拝読した後も同様です。新入信者に伝えると共に自分の姿勢も確認してください。

　

　機関紙や書籍(しょせき)を活用しよう

　御書の他にも、宗門からは興学布教のため様々な機関紙や書籍(しょせき)が発行されています。

　日蓮正宗には、正式な機関紙である大日蓮、今手にしている法華講連合会発行の大白法、そしてまた毎月発刊される妙教などがあります。これらには御法主上人猊下の御説法や御指南をはじめとして、国内外にわたる宗内の出来事や布教講演、法華講員の体験発表などが掲(けい)載(さい)されています。

　特に御法主上人猊下の御指南や御説法は信(しん)仰(こう)の指針ですから、欠かさず拝読するよう心がけましょう。一つひとつの語句が難しく即(そく)座(ざ)には理解できないこともあるでしょうが、そういった点について所属寺院で指導教師に指導を仰(あお)ぐ中で、法華講員としての自覚と方途が明確になっていきますし、師弟の筋道を正しく行ずることにもなるのです。

　また宗門からは、信仰の増進と折(しゃく)伏(ぶく)弘(ぐ)教(きょう)の推進に役立つよう、さまざまな布教書が出(しゅっ)版(ぱん)されています。平成十八年には「大日蓮出版」が設立され、より一(いっ)層(そう)、興学布教の両面にわたる書籍の充実が図られています。

　こうした書籍は、各支部の勉強会や座談会のテキスト・資料としても活用されていることと思いますが、必ずや教学理解のみならず自己の信仰を深める一助となります。

　

　実(じっ)践(せん)行動のための教学研(けん)鑚(さん)

　宗門では、信行学にわたる錬磨の機会として、法華講夏期講習会や法華講教学試験などを行っています。日頃から御書の拝読を中心とした教学研鑚を積んで参加をするのと、全く何も知らずに参加をするのとでは、得る結果にも大きな違(ちが)いがあります。

　ですから、日頃から教学研鑚に励(はげ)み、自らの信仰心を深め培(つちか)っていきたいものです。

　また、教学に親しむということは、「折伏に必要な知識を身につける」ことになると心得てください。

　何より、折伏に際して大聖人の教法の正しさを話すとき、信仰体験の現(げん)証(しょう)に付(ふ)随(ずい)して理(り)証(しょう)・文(もん)証(しょう)の上からも説明ができたなら、説得力が増し、相手も安心して入信することができるでしょう。

　例えば、御書を実際に拝読して「宗祖日蓮大聖人様は、不幸の根源は謗(ほう)法(ぼう)にあると仰(おお)せです」、または法(ほ)華(け)経(きょう)を開いて示し「ここに『四十余年・未(み)顕(けん)真(しん)実(じつ)』とあるのを知っていますか」と折伏対象者に確信をもって伝えることが大切です。

　御書拝読の姿勢一つにも立(りっ)正(しょう)安(あん)国(こく)の実現に向かう折伏弘教の志(こころざし)が現われ、相手の心に必ず響(ひび)きます。

　このように、教学を身につけることが折伏成就の大きな力となるのです。

　御法主上人猊下の、

「ただ学問として、知識として内に秘めるだけで理として持っているだけではなくして、広宣流布のためにしっかりと役立てていく実践行動のための教学こそが大事ではないかと思います」（大日蓮　七六二号）

との御指南をよくよく拝し、布教に資(し)する興学との意識を持って「実践行動の年」も前進してまいりましょう。