一、御述作の由来 本抄は、文永十（一二七三）年、大聖人様が御年五十二歳の時、佐渡
系年に異説がありますが、『観心本尊抄』に関する内容が本抄にも見られることから文永十年に
内容は、題号が示すように小乗と大乗の分別を述べられており、小乗と大乗の名はそれぞれその所対によること。次に二乗作仏・久遠実成の二箇の大事は法華経にのみ説かれることから、法華経が真実の大乗であり、余経は小乗であると判じられ、一切衆生の成仏のみならず、六道を出て十方の浄土に成仏・往生することは必ず法華経の力、すなわち過去に法華経の種を植えられたことによるのであり、けっして爾前諸経の力ではないことを述べられています。
二、本抄の大意 初めに「
すなわち、因果を説かない外道の法に対して、一切の大乗・小乗の仏教は皆、大乗ということ。
仏教に入っても、
諸大乗経の中においても、十地の大法に対して、十住・十行・十回向等の教法を
法華経迹門『方便品』の、
「
の文をもって天台大師・妙楽大師は、阿含経を小乗というのみならず、華厳経の別教、
法華経本門『寿量品』の、
「
の文をもって天台大師は、久遠実成を説かない華厳経の円教、乃至方等・般若・法華経迹門十四品の
さらに、二乗作仏と久遠実成の二箇の大事は法華経にのみ説かれていることから、諸経に対すれば奇妙となるが、法華経の中においては一念三千の法門こそ奇中の奇、妙中の妙であると示され、華厳宗の
そして、法華経において二乗作仏が説かれなければ、九界の衆生の成仏はないこと。また、『寿量品』において久遠実成が説かれなければ、仏は天下第一の
次に、天台宗の学者の中にも、爾前の経々には二乗作仏・久遠実成はないが、余界の得道、すなわち菩薩の作仏と凡夫の往生はあると主張し、法華経を投げ捨てて念仏を
そして、一切衆生の成仏および六道を出て十方の浄土に往生することは、必ず法華経の力によることを示され、爾前得道の真実の意味は、過去に法華経の下種を受けた衆生の機根が熟し、ついに爾前経を縁として、過去の法華経の種が
最後に、末法には過去に法華経の下種を受けた者が尽き、世間の大悪人、出世の謗法者が国に充満していることを述べられます。そして、念仏・禅・真言・律等の小乗の邪義悪法が
三、拝読のポイント 真実の大乗こそ妙法
大聖人様は本抄において、五重相対中の
『観心本尊抄』には、
「一品二半よりの外は小乗教・
と、五重三段中の第五の文底下種三段について明かされていますが、ここに示された「一品二半」とは、第四の本門
つまり、末法においては大聖人様が説かれた文底下種の三大秘法の南無妙法蓮華経こそ真実の大乗であり、それ以外のあらゆる教説は、ことごとく小乗であり、人々を不幸にする邪教、未得道の教え、真実を
三大秘法こそ仏法の根源
大聖人様は本抄において、法華経において久遠実成が説かれなければ、三世の諸仏は常住の仏ではなく、今世限りの無常にして、移り変わり滅する仏となってしまう。それはちょうど、天に多くの星はあっても日月がなく、地に草木はあっても大地がないようなものであると仰せです。
『開目抄』に、
「一切経の中に此の寿量品ましまさずば、天に日月の無く、国に大王の無く、山河に珠の無く、人に
と御教示のように、法華経『寿量品』において久遠常住の仏が明かされたことにより、三世の諸仏もその釈尊の
しかし、文底の仏法より拝すれば、久遠実成をさらに
「実相証得の
と示される本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法が法界根源の大教であり、さらにまた法華経が諸仏出世の一大事といわれる
成仏の種は妙法に限る
また、大聖人様は本抄において、成仏の実義は法華経に限り、爾前の諸経はあくまで助縁に過ぎないことを指摘されています。
すなわち、在世および正像二千年に、爾前諸経において得道した機類は、すべて久遠における法華経の下種によるのであり、その下種を受けた衆生の機根が熟し、爾前経を縁として成仏を遂げたのであり、けっして爾前の諸経によって成仏したのではないことを仰せられています。
大聖人様が『秋元御書』に、
「三世十方の仏は必ず妙法蓮華経の五字を種として仏に成り給へり」（同 一四四八㌻）
と御教示されているように、久遠元初の妙法五字による聞法下種こそ真実の下種なのです。
本抄に、末法には過去に下種を受けた者がいないことを述べられていますが、『教行証御書』に、
「今末法に入っては教のみ有って行証無く在世
と示されているように、末法においては本門の肝心、寿量文底下種の南無妙法蓮華経をもって順逆の二縁に下種するのです。
四、結 び 御法主日如上人猊下は、
「末法のあらゆる人々、貴賎道俗、老若男女を問わず、一切の人々を救うためには、この文底下種の妙法蓮華経を強いて聞かせて、仏種を植えていく以外にはない」（大白法 七八九号）
と御指南されています。
法華講員八十万人体勢構築をめざし、今こそ順逆を選ばず、すべての人々に慈悲の折伏を実践し、本年度折伏誓願目標を完遂してまいりましょう。
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