本日は四月度の広布唱題会に当たり、大勢の方々が参加せられまして、まことに御苦労さまでございます。

　法華経の方便品のなかに、

「若有聞法者　無一不成仏」（法華経１１８頁）

というお経がございます。「若し法を聞くこと有らん者は　一(ひと)りとして成仏せずということ無けん」と、このように訓読いたしますが、つまり、もし法を聞く者は必ず成仏することができると示された御文であります。まさしくこれは、広大無辺なる仏様の大慈大悲と、この妙法の偉大なる功徳を示された御文と、このように拝することができます。

　もちろん、基本的には涅槃経のなかに「一切衆生悉有(しつう)仏性」とありまして、一切衆生は本来、仏性を具しているからだれでも仏に成れると、成仏する素因を持っていると、このように説かれています。しかし、仏性を持っているというだけでは成仏には至りません。そこに「法を聞く」という行為が伴わなければ成仏には至らないのであります。

　ここで肝心なのは、まず第一に「法を聞く」という法とは、いかなる法であるかということであります。この経文は法華経の方便品でありますから、額面どおり拝読すれば、それは法華経のことになります。しかし、それは一往でありまして、再往、「法」というのは文上の法華経を指しているわけではなくして、そもそも文上の法華経というのは、末法の本未有善の衆生を成仏させる、つまり救済するところの力というものはないのであります。このことは大聖人様も『高橋入道殿御返事』のなかで、

「末法に入りなば、迦葉・阿難等、文殊・弥勒菩薩等、薬王・観音等のゆづられしところの小乗経・大乗経並びに法華経は、文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず。所謂(いわゆる)病は重し薬はあさし。其の時上行菩薩出現して妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさづくべし」（御書８８７頁）

と、このように仰せであります。つまり、文上の法華経は「文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず」と仰せであります。

　では、いったい末法の衆生はいかなる法によって成仏できるのか。この御書のなかには「其の時上行菩薩出現して妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさづくべし」と、このように仰せであります。すなわち、末法本末有善の衆生は上行菩薩、すなわち内証久遠元初の御本仏・大聖人様のことでありますが、御本仏大聖人様が御出現せられて、その御本仏の説かれるところの妙法蓮華経、つまり本因下種の妙法蓮華経によって、初めて成仏がかなえられるということになるのであります。故にこの経のなかで「若し法を聞くこと有らん」という「法」というのは、まさしく大聖人様が御建立あそばされた三大秘法の南無妙法蓮華経を指していると、このように拝することが大切なのであります。

　しかし「法」はいくら最高の教えであっても、この法を「聞く」者の信心がまことに大事であります。つまり「若し法を聞くこと有らん」とある「聞く」という意味は、ただ観念的に法を聞くということではありません。身口意の三業にわたって聞くということが肝要であります。南無妙法蓮華経を聞き、身口意の三業にわたって妙法蓮華経と唱え奉るとき、「一りとして成仏せずということ無けん」となるのであります。

　『十章抄』のなかには、

「名は必ず体にいたる徳あり」（同４６６頁）

と、このように仰せであります。妙法蓮華経と唱え奉る功徳は、そのまま我が身にその功徳が具わると仰せあそばされているのであります。ですから妙法蓮華経と身口意の三業にわたって聞き、行じていくということを忘れてはならないのであります。

　ただし、もう一つ、我々の信心においては大事なことがあります。それは「法を聞く」、その功徳を自分だけのものではなくして、他の多くの人達に知らしめて、御本尊様の功徳、素晴らしさを説き聞かすということが肝要であります。つまり、折伏をすることであります。自行化他にわたる信心においては、自分だけの信心というのは存在しません。折伏するに当たって、まず私達は一切衆生救済の慈悲行に立っていることを自覚すべきであります。

　そして、この折伏に当たって、まず第一に我々が心得ていく、しっかりと銘記していかなければならないことは、我々自身が大御本尊様に対する絶対の確信を持つことであります。つまり、諸宗諸経は一切合切、すべて邪教、不幸の根源であり、御本尊様以外に私達が幸せになれる法は絶対にない、そういう大確信を持つことであります。この大確信を持って人々に強く訴えていくところに、折伏の大事が存するのであります。「信心をしていなければ本当の幸せは得られない」ということを、真心を込めて真剣に訴えていくということが折伏であります。そうした確信ある言動と真心が相手の心を必ず揺さぶるのであります。御本尊様に真剣に祈り、そしてさらに強い確信を持って折伏に当たれば、必ず相手の心が動くはずであります。

　したがって、このように考えてまいりますと、折伏をしないという信心は、これは本宗の信心の上から言えば本当の信心ではない、つまりそれはなぜかと言えば無慈悲になるからであります。

　大聖人様は『阿仏房尼御前御返事』に、

「云ひて罪のまぬかるべきを、見ながら聞きながら置いていま(禁)しめざる事、眼耳の二徳忽(たちま)ちに破れて大無慈悲なり。章安の云はく『慈無くして詐(いつわ)り親しむは即ち是(これ)彼が怨なり』等云云」（同９０６頁）

と、このように仰せであります。我々は絶対にこのような侮(あなど)りを受けてはなりません。

　世間には、池田創価学会や様々な邪宗教がはびこっております。その邪義に惑わされた多くの人達、そして、そうした邪宗教に浸りきっている人達がたくさんいます。

　特に、この他田創価学会に対しましては、前御法主日顕上人は「現代の一凶」と断ぜられております。そうした人達に対して、不幸の根源がすべて謗法にあることを知らしめ、謗法を責め、謗法を破折し、その謗法から救っていくことが大事なのであります。これが我々の信心であり、これが自行化他にわたる信心であります。

　『千日尼御返事』には、

「大善も用ふる事なし。法華経に値(あ)はずばなにかせん。大悪もなげく事なかれ、一乗を修行せば提婆が跡をもつぎなん」（同１４７５頁）

と、このように仰せであります。大聖人様の仏法によって、いかなる人も必ず成仏をすることが、この御金言によっても明らかであります。

　今、宗門は「平成二十一年・『立正安国論』正義顕揚七百五十年」の御命題である「地涌倍増」と「大結集」へ向けて、僧俗一致して前進をしております。この時に当たりまして、我々本宗僧俗は、心を一つにして折伏に立ち上がり、日顕上人から御下命をいただいた「地涌倍増」と「大結集」の御命題をなんとしてでも果たしていかなければならない、このように思います。

　謗法の害毒によって蝕(むしば)まれている人を折伏によって救っていくのが法華講衆の信心であり、それが法華講衆の使命であります。

　皆様方にはこのことを銘記され、自行化他にわたる信心にいよいよ励まれますようお祈りいたしまして、本日の挨拶といたします。