|
本日は、宗祖日蓮大聖人御誕生会に当たり、海外からの御信徒を含め大勢の方が参加され、まことに御苦労さまでございます。
皆様も既に御承知の通り、宗祖日蓮大聖人様は、今から七百九十七年前の貞応元（一二二二）年二月十六日、安房国（現在の千葉県）に御誕生あそばされました。
大聖人様の末法御出現は、三千年の昔、既に釈尊が法華経において予証せられており、法華経如来神力品には、
「日月の光明の 能く諸の幽冥を除くが如く 斯の人世聞に行じて 能く衆生の闇を滅す」（法華経 五一六㌻）
と仰せられているのであります。
この御文について、大聖人様は『寂日房御書』に、
「経に云はく『日月の光明の能く諸の幽冥を除くが如く、斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す』と此の文の心よくよく案じさせ給へ。『斯人行世間』の五つの文字は、上行菩薩末法の始めの五百年に出現して、南無妙法蓮華経の五字の光明をさしいだして、無明煩悩の闇をてらすべしと云ふ事なり。日蓮等此の上行菩薩の御使ひとして、日本国の一切衆生に法華経をうけたもてと勧めしは是なり」（御書 一三九三㌻）
と仰せであります。
すなわち「日月の光明の 能く諸の幽冥を除くが如く 斯の人世間に行じて 能く衆生の闇を滅す」との御文は、地涌の菩薩の上首・上行菩薩が末法に出現され、あたかも太陽や月の光が諸々の闇を照らすように、多くの人々の心の闇を照らし、救済されると仰せられているのであります。
そもそも、仏教におきましては、三時弘経の次第として、釈尊の滅後、正法時代・像法時代・末法時代の三時には、それぞれいかなる人師が、いかなる法を弘通すべきかが定められているのであります。
すなわち、正法時代には迦葉、阿難、竜樹、天親等が小乗経、権大乗経を弘め、像法時代には天台、伝教等が法華経迹門の教えである理の一念三千の法門を弘め、正像二千年を過ぎて末法になると、闘諍堅固・白法隠没の時代となり、争いごとが起き、世の中が乱れ、釈尊が説かれた法は功徳が消滅し、効力がなくなると説かれているのであります。
そこで、釈尊は法華経神力品において、滅後末法の弘通を上行菩薩に委ねられ、御自身の亡きあと、正像二千年を過ぎた末法になるとその上行菩薩が御出現され、南無妙法蓮華経を説かれて「衆生の闇を滅す」すなわち、多くの人々を救われると仰せられているのであります。
故に『高橋入道殿御返事』には、
「末法に入りなば迦葉・阿難等、文殊・弥勒菩薩等、薬王・観音等のゆづられしところの小乗経・大乗経並びに法華経は、文字はありとも衆生の病の薬とはなるべからず。所謂病は重し薬はあさし。其の時上行菩薩出現して妙法蓮華経の五字を一閻浮提の一切衆生にさづくべし」（同 八八七㌻）
と仰せられているのであります。
大聖人様はその上行菩薩の再誕として、末法に御出現あそばされたのであります。しかし、大聖人様が上行菩薩の再誕として御出現あそばされたのは、あくまでも外用のお姿であり、大聖人様の御内証は久遠元初自受用報身如来の御本仏にましますのであります。
このことを、総本山第二十六世日寛上人は『文底秘沈抄』のなかで、
「若し外用の浅近に拠れば上行の再誕日蓮なり。若し内証の深秘に拠れば本地自受用の再誕日蓮なり。故に知んぬ、本地は自受用身、垂迹は上行菩薩、顕本は日蓮なり」（六巻抄 四九㌻）
と御指南あそばされているのであります。
すなわち、今、末法は釈尊の説かれた文上の法華経では、一切衆生救済の良薬とはならず、久遠元初の御本仏の御出現と、その御本仏の説かれる教え、すなわち文底下種の南無妙法蓮華経によって、初めて末法本未有善の衆生の成仏得道がかなえられるのであります。
故に今、私どもは宗祖日蓮大聖人様を末法の御本仏と仰ぎ奉り、大聖人様が宗旨の御法体として御建立あそばされた人法一箇の大御本尊を帰命依止の本尊と崇め奉り、至心に妙法を唱え、広布の大願を目指して自行化他の信心に励んでいくところに、即身成仏の本懐を遂げることができるのであります。
特に本年は、宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の佳節まで、いよいよあと二年、誓願達成へ向けてまことに大事な年を迎えています。この時に当たり、私どもは国の内外を問わず、法華講の全支部が、かねて御宝前に誓った法華講員八十万人体勢構築の実現へ向け、総力を結集して誓願を達成することが肝要であります。
誓願達成の秘訣は一に、大御本尊様に対する絶対の確信と弛まぬ折伏の実践、そして異体同心の団結であります。まさしく、
「異体同心なれば万事を成ず」（御書 一三八九㌻）
であります。
大聖人様は『兄弟抄』に、
「設ひいかなるわづらはしき事ありとも夢になして、只法華経の事のみさはぐらせ給ふべし」（同 九八七㌻）
と仰せられています。
正しい信心をしていけば、様々な魔が競い起こることは必定あります。しかしながら、
「此の法門を申すには必ず魔出来すべし。魔競はずば正法と知るべからず」（同 九八六㌻）
と仰せの如く、正しい信心をしていくから魔が騒ぐのでありまして、その魔に負けない強盛なる信心を貫いていくところに、必ず大御本尊様の広大無辺なる功徳を享受することができるのであります。
どうぞ皆様方には、この御金言を心肝に染め、世界中の法華講支部が一支部も欠けることなく、誓願達成を目指して、いよいよ御精進されますよう心から念願し、本日の挨拶といたします。
|