第４５歩　～日応上人歌碑～

　

　東(ひがし)塔(たっ)中(ちゅう)参(さん)道(どう)の歩(あゆ)みを進(すす)めると、西(にし)側(がわ)に蓮(れん)葉(よう)庵(あん)が建(た)てられています。この蓮葉庵の庭(てい)園(えん)に総(そう)本(ほん)山(ざん)第(だい)56世(せ)日(にち)応(おう)上(しょう)人(にん)の御(ご)辞(じ)世(せい)の碑(ひ)が立(た)てられています。

　この碑には、日応上人が、

「草(くさ)の葉(は)に置(お)く身(み)は露(つゆ)と消(き)ゆるとも　意(こころ)は法の華(はな)に注(そそ)がん」

とお詠(よ)みになられた御(お)歌(うた)が刻(きざ)まれています。

　日応上人の「応」の字(じ)を囲(かこ)むようにして、「日」の字をお認(したた)めになられているのが特(とく)徴(ちょう)的(てき)です。

　この碑が立てられている蓮葉庵は、往(おう)古(こ)の寿(じゅ)命(みょう)坊(ぼう)旧(きゅう)跡(せき)であり、第52世日(にち)霑(でん)上人が建(こん)立(りゅう)して蓮葉庵と称(しょう)し、日応上人が御(ご)隠(いん)退(たい)後(ご)、ご登(と)山(ざん)の折(おり)に住(す)まわれる所(ところ)として復(ふっ)興(こう)されたゆかりの地(ち)です。

　日応上人は、嘉(か)永(えい)元(がん)（1848）年、山(やま)梨(なし)県(けん)の上(かみ)神(か)内(の)川(がわ)村(むら)（現(げん)在(ざい)の山梨市(し)）に誕(たん)生(じょう)され、安(あん)政(せい)５（1858）年に、日霑上人の徒(と)弟(てい)となられました。

　その後(ご)、福(ふく)島(しま)県(けん)三(み)春(はる)町(ちょう)・法(ほっ)華(け)寺(じ)、仙(せん)台(だい)市(し)・仏(ぶつ)眼(げん)寺(じ)の住(じゅう)職(しょく)を務(つと)められ、福島市に広(こう)布(ふ)寺(じ)を建立されるなど、奥(おう)州(しゅう)広(こう)布(ふ)に邁(まい)進(しん)されました。

　明(めい)治(じ)19（1886）年には、東(とう)京(きょう)常(じょう)泉(せん)寺(じ)の住職を務められ、明治22年に、第55世日(にっ)布(ぷ)上人より御(ご)相(そう)承(じょう)を御(お)受(う)けになられ、第56世の法(ほう)灯(とう)を継(つ)がれました。

　当(とう)時(じ)、本(ほん)宗(しゅう)は、明治政(せい)府(ふ)の政(せい)策(さく)により、日(にち)蓮(れん)宗(しゅう)興(こう)門(もん)派(は)に所(しょ)属(ぞく)させられましたが、要(よう)職(しょく)にあられた日応上人は、独(どく)立(りつ)を断(だん)固(こ)主(しゅ)張(ちょう)され、明治33（1900）年、長(なが)年(ねん)の尽(じん)力(りょく)が実(みの)り、本(ほん)宗は独立を果(は)たしました。

　また、日応上人は、総(そう)本(ほん)山(ざん)の境(けい)内(だい)整(せい)備(び)にも尽力され、明治35年には、大(だい)規(き)模(ぼ)な御(み)影(えい)堂(どう)の修(しゅう)築(ちく)を行(おこな)われています。

　明治41年に、第57世日(にっ)正(しょう)上人に法を付(ふ)嘱(ぞく)された後(のち)も、東京都江(こう)東(とう)区(く)に白(びゃく)蓮(れん)院(いん)を建立され、東京都豊(と)島(しま)区・法(ほう)道(どう)院(いん)の前(ぜん)身(しん)である法道会(かい)を設(せつ)立(りつ)されるなど、首(しゅ)都(と)圏(けん)を中(ちゅう)心(しん)とした弘(ぐ)通(づう)に邁(まい)進(しん)されました。

　有(ゆう)名(めい)な著(ちょ)述(じゅつ)には、要(よう)法(ぼう)寺(じ)（日(にち)蓮(れん)本(ほん)宗(しゅう)）・驥(き)尾(び)日(にっ)守(しゅ)の論(ろん)議(ぎ)を下(げ)種(しゅ)仏(ぶっ)法(ぽう)の本(ほん)義(ぎ)から破(は)折(しゃく)された『弁(べん)惑(なく)観(かん)心(じん)抄(しょう)』などがあります。

　私(わたし)たちは、日応上人の御(ご)生(しょう)涯(がい)を通(とお)して折(しゃく)伏(ぶく)弘(ぐ)教(きょう)に邁進された御(ご)精(せい)神(しん)を拝(はい)し、日(ひ)々(び)の信(しん)心(じん)修(しゅ)行(ぎょう)に励(はげ)んでいくことが大(たい)切(せつ)です。