第２８歩
　～久成坊～

　

　総(そう)本(ほん)山(ざん)の三(さん)門(もん)をくぐり参(さん)道(どう)の歩(あゆ)みを進(すす)めると中(ちゅう)央(おう)塔(たっ)中(ちゅう)の東(ひがし)側(がわ)に久(く)成(じょう)坊(ぼう)があります。

　久成坊は、第(だい)３祖(そ)日(にち)目(もく)上(しょう)人(にん)の弟(で)子(し)であった玉(たま)野(の)太(たい)夫(ふ)阿(あ)闍(じゃ)梨(り)日(にち)尊(ぞん)師(し)が、正(しょう)応(おう)３（1290）年(ねん)に、第２祖日(にっ)興(こう)上(しょう)人(にん)の大(たい)石(せき)寺(じ)開(かい)創(そう)と共(とも)に創(そう)建(けん)されました。

　その後(ご)は、再(さい)建(けん)・改(かい)築(ちく)等(とう)をくり返(かえ)し、明(めい)治(じ)時(じ)代(だい)には、境(けい)内(だい)に観(かん)成(じょう)洞(どう)という小(しょう)学(がっ)校(こう)の分(ぶん)校(こう)が置(お)かれていたこともありました。

　現(げん)在(ざい)の建(たて)物(もの)は、平(へい)成(せい)19年に、立(りっ)正(しょう)安(あん)国(こく)論(ろん)正(しょう)義(ぎ)顕(けん)揚(よう)750年の記(き)念(ねん)事(じ)業(ぎょう)によって再建新(しん)築(ちく)されました。

　本(ほん)堂(どう)の御(ご)宝(ほう)前(ぜん)には、総本山第17世(せ)日(にっ)精(せい)上(しょう)人(にん)が認(したた)められた常(じょう)往(じゅう)御(ご)本(ほん)尊(ぞん)が御(ご)安(あん)置(ち)されています。

　この久成坊を創建された日尊師は、もともと天(てん)台(だい)宗(しゅう)の僧(そう)侶(りょ)でありましたが、弘(こう)安(あん)６（1283）年、日目上人に教(きょう)化(け)を受(う)けて改(かい)衣(え)得(とく)度(ど)し、その後、日興上人の弟子になりました。

　しかし、久成坊を創建してから９年後の正(しょう)安(あん)元(がん)（1299）年、日興上人の御(ご)説(せっ)法(ぽう)中(ちゅう)に梨(なし)の木(こ)の葉(は)が落(お)ちるのに気(き)を取(と)られていた日尊師は、「大法を弘(ひろ)める者(もの)が説法中に落ち葉に心(こころ)を奪(うば)われるとは何(なに)事(ごと)か。速(すみ)やかに席(せき)を立(た)ちなさい」と日興上人より叱(しっ)責(せき)を受け、勘(かん)当(どう)されました。

　日尊師は深(ふか)く反(はん)省(せい)し、発(ほっ)心(しん)して弘(ぐ)教(きょう)に邁(まい)進(しん)しました。そして、12年の間(あいだ)、東(とう)北(ほく)地(ち)方(ほう)を中(ちゅう)心(しん)として各(かく)地(ち)に弘教の歩みを運(はこ)び、各地の36ヵ寺(じ)もの寺(じ)院(いん)を改(かい)宗(しゅう)・建立され、勘当を解(と)かれたと伝(つた)えられています。

　正(しょう)慶(けい)２（1333）年には、日(にち)郷(ごう)師と共に日目上人の天(てん)奏(そう)にお供(とも)をされ、美(み)濃(の)の垂(たる)井(い)で日目上人が御(ご)遷(せん)化(げ)された後(のち)は、御(ぎょ)意(い)のままに遺(い)骨(こつ)を奉(ほう)じて上(じょう)洛(らく)し、代(だい)奏(そう)を遂(と)げられました。その後は、そのまま京(きょう)都(と)に残(のこ)り、要(よう)法(ぼう)寺(じ)の前(ぜん)身(しん)である上(ぎょう)行(ぎょう)院(いん)を建立しています。

　私(わたし)たちは、梨(なし)の木(き)の話(はなし)にもあるように、御(ご)法(ほう)門(もん)を真(しん)剣(けん)に聴(ちょう)聞(もん)することの大(たい)切(せつ)さを学(まな)び、御(ご)報(ほう)恩(おん)御(お)講(こう)や広(こう)布(ふ)唱(しょう)題(だい)会(かい)をはじめとして、常(つね)日(ひ)頃(ごろ)から所(しょ)属(ぞく)寺院に参(さん)詣(けい)し、信(しん)心(じん)修(しゅ)行(ぎょう)に励(はげ)むことが大切です。